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雲南旅行 6日目

■10/20 
MKちゃんが先に起きて、チケットのキャンセルが出たかどうか、航空会社に聞きに行った。無事に希望の日時でチケットが取れたらしい。 
朝、郵便局に行って、日本やいろんな国の友達に手紙を出す。朝方は冬のように寒く、肉まんを蒸す湯気が歩道を覆い尽くすほどにものすごい。 
納帕海というが海ではなく草原のような場所が見どころとして歩き方に載っているので、行ってみようということになる。 
朝、ホテルのフロントで行き方を訊いたら、路線バスの運転手に交渉するか、タクシーを使えと言われる。ホテルの前で2路のバスの運転手に「ナパハイ?」と言ってみるが首を横に振られたので、タクシーをつかまえる。珍しく女性ドライバーで、日やけした丸顔の、感じの良い人だった。 
納帕海に行ってくれと伝えると、春は高原植物が花を咲かせて美しいが、この時期は「不美」だと書いて見せてきたが、美しいものは花ばかりでもなかろうと、かまわず行ってもらう。 
20分ほど走ると納帕海に着く。タクシーのドライバーも案内がてら納帕海の中に入ってきてくれた。 
肉眼で見えるかぎり草原で、遠くには山がかすんで見える。空がとても美しい。チベット仏教のものか、ストゥーパ(仏塔)がいくつか建っていて、古いものらしいがペンキで水色に塗られている。 
お金を払うと馬に乗って草原を散歩できるようで、どうですか?と勧められたが、MKちゃんとわたしは同じときにイギリスで馬に乗り、怖い思いをしている仲間なので「我們不愛馬」とノートに書くと、「ウォーメン、プーアイ、マー?」と声を出しながら読み、笑いながら「あらそうなの」とあっさりあきらめた。 
日差しがとても強く、ドライバーの女性は「日に焼けるから、車に戻っています」というような身振りをして駐車場のほうへ戻っていった。わたしたちは草原をさまよってみることにして、しばらく歩いて振り返ると入り口がとても遠くに見える。海で泳いでいて、気付くと岸からだいぶ離れてしまっている、あのときの感覚に似ていて、そういう意味では海だなと思った。 
入り口付近からはよく見えなかったが、しばらく歩いていくと、草原のちょうど真ん中あたりに「納帕海」と記された石碑のようなものがこちらを向いて建っているのが見える。あの石碑の裏には何が書いてあるのか?と気になって、さらに歩いて石碑の裏に回ってみたが、何も書いていないのっぺらぼうだった。 
足元は草でふかふかとやわらかくていい気分だが、前日雨が降ったのか、夜露がおりるのかわからないけど、ぬかるんでいる部分もある。近くや遠くに、馬やロバのような動物がぼーっとたたずんでいる。 
1時間ほど納帕海にいただろうか、駐車場に戻ってドライバーの女性と合流する。当初は納帕海と町を往復するだけのつもりだったので40元という約束だったが、香格里拉のまわりには湖や温泉地など他にも見るところがあるよ、という話だったので、1日で230元(250元からまけてもらった)で案内してもらうことにする。 
いちど町に戻る途中で、ドライバーさんが商店に立ちより、花巻(あんのない肉まん)をいくつか買って戻ってきた。「家に帰って、ごはんを食べる」というようなことを言っているので、「どうぞどうぞ」「私たちもその間にお昼を食べよう」などと言っていたら彼女の家に着いて、「上がってください」と促された。ああ、「よかったらお昼をうちで食べて!」と言っていたのか、とそのときやっと気付いて、また図々しくもご相伴にあずかることにする。 
彼女の家は立派な門のある大きな一軒家で、窓が多く、明るい。家の中をひととおり案内してもらう。ベッドルームまで見せてくれた。屋上には大きなざるにひまわりの種が干してあり、私たちにもどっさりくれる。 
昼食には、牛(おそらく)の内臓とキノコを唐辛子で煮込んだシチューのようなものとさっき買った花巻、バター茶をごちそうになった。バター茶はMKちゃんの口にはあまりあわなかったようだ。私もとくにおいしいとは思わなかったが、飲み干すとどんどん注いでくれる。 
途中、彼女と同じぐらいの歳の男性が帰ってきたので、旦那さんかな?と思っていると、弁解するように「あれは私の夫ではなく、弟です」とわざわざ書いて見せてきてかわいらしかった。兄弟がいるなんてめずらしいな、このあたりはやっぱり少数民族が多いからかな、と思った。彼女の顔立ちも漢民族らしくはないので、おそらくチベット族の人だろう。 
話をきいているうちに、この家にはドライバーさん夫婦とその子供、そして彼女の弟がいっしょに暮らしているらしいことがわかった。子供は男の子だそうだ。 
それにしても調度品や電化製品がすべて新しく、暮らしは豊かそうだった。 

午後は弟が運転を代わり、まず湖に向かう。属都湖という名前で、入場券を買ったらその半券が絵はがきになっていた。自然保護区のような感じの場所で、水はきれいだけど特に何もないし人も少ない。すぐに退屈して戻る。湖の駐車場を出るときに、私たちの車を追いかけてくるおじさんがいるので、何か届けに来てくれたのかな?と思って「謝々」と言って受け取ろうとしたら、駐車場の代金を請求されているのであった。払って駐車場を出る。 
湖のあとは天生橋(温泉地)へ向かってもらう。午前中にお姉さんも言っていたとおり、道が悪く(舗装されていない)、時間がかかった。 
天生橋は湯治場のようなところらしく、露天風呂のような、プールのような温泉の脇に客室がいくつかくっついている。イスラエル人の年配のツアー客が十数人いるほかは、誰もいない。温泉のはじにあるあずまやのような建物や、バーらしき施設などは改装工事をしていた。 
町への帰り道に、次の日も観光するなら自分のタクシーを使ってくれ、と弟が言ってきたが、翌日に麗江へ行くことになっているのでそう言うと、「虎跳峡を経由して麗江まで行ってあげる」と言う。でも日数もないし麗江にはやく着きたかったので、断る。 

ホテルの前でおろしてもらって、弟に名刺をもらって別れ、部屋に荷物を置いてから、またCD屋を冷やかしに行く。香格里拉の初日にテレビで見た革命現代京劇のVCDがないかな、と思って何軒かまわったが見つからない。ホテルに近い、小さいCD屋で別の現代京劇のVCDを買おうとしたら、店の奥で店主とだべっていた男性(向かいの洋服屋の店主らしい)も一緒になって興味津々で話しかけてくれたので、私たちもストーブのそばに座り込んで筆談でたくさん話す。この地方の民族音楽のCDをおまけにもらった。 
京劇が好きなの?と訊かれて、2日前にテレビで見ただけだとは言えず、現代京劇に興味があります、探している作品(「智取威虎山」)があるけど見つからない、と言うと、店主が、「この店には智取威虎山はないけど、住所を教えてくれれば、探して日本まで送ってあげる」と言い出す。さすがに悪いので、「送ってもらったら高いし、けっこうです」と言うと「船便で送るから大丈夫」と言うし、送ってくれるならお金を払っていきます、と言っても受け取ってくれない。 
夜も更けてきたので「そろそろ帰ります、ありがとう」と言ったら「この町に来た記念に贈り物をしたいから、また明日来て」と言われたので、また明日来ることにする。 
スーパーでカップ麺を買って帰る。部屋に戻ってから箸がないことに気付いて、フロントに聞いてみても箸はないというので、仕方がないのでボールペンか何かで食べるか、と観念してふたをあけたら、折りたたみ式のフォークがはいっていた。