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雲南旅行 7日目

■10/21 
朝、きのうのVCD屋に行く。藏族(チベット族)の首飾りとブレスレット、ぶんぶん振り回してお祈りに使うデンデン太鼓みたいなものをもらった。日本からお礼状を送りますと言ったら喜んでくれた。 
VCD屋のあるじに再度バスターミナルの場所を聞いたら、きのう携帯電話屋で聞いた通り、町外れに移転しているようで、1路のバスに乗っていけと言われた。 
ホテルに戻り、荷物をまとめてチェックアウトしようとしていたらお腹が痛くなった。ロビーにはお手洗いがなさそうだったので、さっきまでいた自分たちの部屋に走って戻ったら、もう掃除の人が入っていた。色の浅黒い、にこやかな女性で、私より年下に見えた。日本語で「いいですか?」と言いながら浴室を指差したら、笑顔でうんうんと頷いてくれたので、トイレを借りてから、またロビーに戻った。 

1路のバスに乗ると、終点がバスターミナルだった。10時45分ごろだったが、12時のバスの券が買えた。チケットカウンターの脇が待合室になっていて、プラスチックの近代的なベンチが並んでいるのだが、ものすごく寒く、じっとしていると手足が痺れてくるようだった。近くに喫茶店とか、それらしき店はないかと見回してみるも、飲み物を売るスタンドぐらいしかない。仕方なく寒い待合室に戻り、新聞を読んでいたら、もうバスに乗り込めることが分かった。 
バスの後部にバックパックを積み入れてもらい、荷物係のおじさんの写真を撮る。そしたらおじさんも私たちふたりの写真を撮ってくれた。逆光だった。 
座席に座ると、前の座席との間がすごくせまい。乗客は私たちをのぞいて全員中国人のようだった。ものを食べる人、眠る人、しゃべる人がいた。 

正確な場所はよく分からないが、たぶん虎跳峡を超えたあたりで一度トイレ休憩があった。私はただ脚を伸ばしたくてバスから降りた。私の後ろの座席に座っていたウィンドブレーカー姿の中国人は英語を解したので少し話した。彼は北京から旅行に来て、香格里拉で高山病になったという。北京はあまりに大きく、人もあまりに多いので、おすすめしない、というようなことを言っていた。そのとおりなのだろうと思った。 

再びバスに乗り込むと、北京の人がざくろを半分に割って、私たちにくれた。私が知っているよりも、果肉の色は薄く、ほとんど透明だったが、とても甘くて、蜜みたいだなと思った。 
麗江のバスターミナルに着いたのは、午後まだ早いうちだったと思う。雲南では宿の客引きというものにまだ遭遇していなかったが、まだバスを降りもしないうちから何やらつかまりそうな気配がしていた。バスを降り、バックパックを受け取って出口へ向かうと、その間に宿の写真を持った客引きが何人かいた。一人しつこい中年女性の客引きがいて、「私が娘たちとやっている宿だ」と見え透いた嘘を言うのでとりあえず逃げた。そのあと声をかけてきた10代ぐらいの女の子も客引きだったが、客引きにしてはずいぶん控えめで、美人だし、その宿に泊まろうということになった。宿までのタクシー代も彼女が払った。 
宿は麗江の旧市街、古城にあり、周囲の道幅が狭い。宿の目の前まで車で行くのが難儀なのか、途中で降りて歩くことになった。 

徒歩で宿に向かっていると、私たちの前を歩いていた宿の女の子に中国語で話しかけてきた日本人がいた。これから向かう宿に泊まっているそうで、Y君という名前だった。同宿の日本人みんなで、その日の夕食をとることになっていると教えてくれたので、まぜてもらうことにした。 

宿に着いて話を聞いてみると、Y君はMKちゃんの住んでいる札幌のマンションの近くの飲み屋で働いていたことがわかった。中国へは、福岡から韓国を経由して陸路で入り、大連で3ヶ月料理の修業をするうちに、中国語を身につけたのだという。旅人特有の精悍さがあった。 
部屋はドミトリーでもいいと思ったが、風邪をひいている人が多いと聞いて、二人部屋をとることにする。 

宿の中庭で話しているうちに、ほかの泊まり客も集まってきた。 

ギターをかついで旅している人 
これから香格里拉へ向かう予定だという人 
痔を病んでいてみんなにからかわれている人 
旅行会社を辞めて旅に出たのだという人 
翻訳の仕事をしていたという人(私たちが来るまでは唯一の女性客) 

がいた。 

ギターの人は風邪があまりよくないらしく、みんなに早く寝ろと言われていたが、「自分の彼女がほかの男に犯されたらその男をボコるか否か」という話をずっとしていた。何かあった人か、何かあった人だと思われたい人か、どちらかだろうと思った。 

この宿で風邪が流行ったせいで、みんな虎跳峡に行かれなくなって、沈没しているらしい。 

夜になると寒いので、夕食を中庭でとったあとはソファとテレビのある部屋に移動して、ウミガメのスープの問題を出したり、ビールを飲んで当たりの王冠を集めたり、ひまわりの種を食べたり、それまでに旅した国の話をしたりして楽しくしていた。 

明日こそはみんな虎跳峡に行くらしいので、Y君のアドレスをもらってから、寝る。