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雲南旅行 5日目

■10/19 
昼ごろ起きて、きのう野生児のお母さんからもらった梨を食べる。 
北京の搭乗ゲートで没収されてしまったためにナイフがなく、どうやって皮を剥こうと二人で頭をひねった結果、部屋にあったプラスチック製のペーパーナイフで剥いてみることにする。なんとか剥けるけど、どうしても厚くなってしまって、果肉がもったいないと言っていたら、MKちゃんが薬のアルミシートを持ってきて剥きはじめた。これが不思議なぐらいきれいに剥けて、おおこれはすごいと盛り上がる。梨は野趣あふれる味がした。
次に訪れる予定の麗江という町から昆明に戻る便を予約しなければいけないので、香格里拉の「唯一の旅行会社」と歩き方に書いてある建物へ歩いていく。メインストリートを離れると、まだ舗装もされていない砂利の道が続いていて、途中には小学校もあった。高い建物は一つもない。 
旅行会社はコンクリート造りの3階建てぐらいの建物で、チベットのポスターやツアーの広告がたくさん貼ってあった。香格里拉チベットへ向かう旅行者が経由する町でもある。 
背の高いショートヘアの女性が、航空券の残席状況をとても親切に調べてくれて、若干空きがあるということだったが、中国東方航空のオフィスに行かなければ買えないという。お礼を言って旅行会社を出て、メインストリートと並行して走っている道にある大きなホテルを目指して歩く。この道は幅が広いわりに何もない。 
目指したホテルは一度行き過ぎてしまったが、道行く人に確認してなんとかたどり着く。航空会社のオフィスはホテルの中にあるのかと思ったら、別の入り口があった。 
私は24日の朝の便に乗ることにして、空席があったのでその場ですぐに買うことができたが、MKちゃんは1日早く昆明に戻る予定で、その日には空席がなく、とりあえず別の日に予約を入れておいて23日の便をキャンセル待ちにしたい、という旨を一生懸命伝えようとしていたら、漢民族ではなさそうな風貌の、英語が話せる男性が通訳してくれて希望通りに手配してもらえたようだった。彼は帰りがけに「もう大丈夫かな?僕は帰るけど」とわざわざ私たちに声をかけてくれた。 
一度宿に戻ってから、松賛林寺という有名なお寺に行ってみることにする。フロントの女性に行き方を訊いたら、3路(3番)のバスの終点だという。バスは路線ごとに車体の色が塗り分けられているので間違わない。3路は緑色だったか、水色だったか。 
松賛林寺に向かう途中に、空がとても近いのを見る。町を離れると高山地帯であることを感じさせる草原が広がっていて、かなたに見えるさらに高い山のふもとに松賛林寺があった。 
参道というのか、寺へと伸びる道には土産物や工芸品を売る小さな店が並んでいる。寺の入り口から境内まではずっと階段だ。大人がみんなひいこら言いながら一段一段上がっているのが上のほうに見えた。私たちも上り始めたが案の定息が切れて足が重い。階段は二百段ほどあっただろうか。上りきったところには、民族衣装を着て観光客に写真を撮らせ、金を要求する子供らが何人か群れていた。白人の観光客がその子たちにつかまっているうちに脇をすり抜けて本堂へ向かう。 
本堂の屋根には、真っ黄色の装飾がついていて、絵具の青色をしている空とのコントラストで目が痛いほどだった。お坊さんは橙色の袈裟を着てブラブラしている。お堂の中に入るとすぐ壁画があったが、最近ペンキで描いたようにも見えてありがたいのかどうかわからなかった。二階に上がると、回廊に金属の筒がたくさん並んでいて、団体旅行者についていたガイドの話を盗み聞きしたところによるとその金属の筒を一度回すと一度お経を唱えたことになるという都合のいい設備であった。 
黄色い装飾のある屋上にも上ることができたが、天窓のガラスが外れかかっていたり、箒が打ち捨てられていたりとむしろすさんだ屋上で、見ないほうがよかったかもしれない。
この寺ではちょうど映画だかドラマだかの撮影が行われていて、坊さんたちが興味津々で撮影現場に近づき、ADみたいな人にあっちに行ってくださいとたしなめられたりしていた。 
本堂から少し階段を下りたところにもう一つ小さなお堂があり、入り口から覗いたら椅子に腰掛けた年老いた坊さんが「いらっしゃい」と手招きしてくれたので中に入ってみた。本堂のほうではお賽銭を入れるようなところも見当たらなかったが、こっちにはあったので、小銭を入れておく。このお堂の外では、ゲイのカップルらしき白人の二人組が四・五人の小坊主に囲まれて写真を撮っていてほほえましかった。 

このあたりには寺以外に見るものもないので、来たときと同じ3路のバスに乗って町に戻る。本屋やレコード屋でVCDやCDを見たり、スーパーを冷やかしたりしているうちに夕方になり、寒くなってきたので一度宿に戻った。 
夕飯はTibet Cafeというレストランに食べに行く。ゲストハウスに併設されているカフェテリアのようなところだった。チベットに行くか、チベットから帰ってきた旅行者が多いようだった。みんなシュラフをかついで山登りルックだった。 
レストランの客なのか宿の客なのかはわからなかったが、白人の女性旅行者が「ここでカメラをなくしたか盗まれた」と言って入ってきて、店員さんが探したが出てこないので、警察を呼んだりしてバタバタしていてなかなか注文できなかったが、やっとのことで頼んだ山羊肉と湯葉の入った鍋はおいしかった。 
私たちはずっとダイアモックスという高山病対策の薬を飲んでいたので、MKちゃんはアルコール禁止だと思っていたらしいが、処方時にそんな指示はなかったよ、と言ったら張り切ってビールを飲んでいた。
また満天の星を見ながら宿に帰って寝た。